業種別事例研究 歯科医編

業種別事例研究

 

最新情報は、あまりにもなまなましい内容になってくるので、昭和の時代のわたしが駆け出しの調査官時代のメモを基礎に書いてみようと思います。

業種別事例研修

税務署では、調査経験の浅い調査官を集めて、先輩たちが蓄積してきた高度な調査技術を学ばさせて、育成するために「業種別事例研修」が開催されます。若き頃のノートから復元してみます。

今回は歯科医編です。

歯科医の調査

はじめに

歯科医の収入は、大きく分類すると保険収入と自費収入になります。現在保険収入は電子カルテとレセプトが連動しており、基本計上漏れはない。ただ、一部の歯科医は、自費収入の患者の保険収入の保険窓口分を貰わなかったり、それでいて、保険診療の7割分はしっかり基金に請求しているなど保険制度を○○しすぎと言えるような者が見受けられる。この場合、PCの中では、窓口収入が未収入金になったままだったりします。未収入金の分析をすると、診察時にレセプト上の代金は3,000円だったので、窓口で3割900円をもらったが、何らかの理由により、レセプト上の代金が5,000円に書き換えられると、窓口で貰うべき金額が1,500円必要になり600円不足になります。みなさん、歯医者に通っていて、前回請求漏れでしたので、600円くださいと言われたことありますか。ありませんよね。歯科医院経営者は、上乗せ分2,000円の7割1,400円が基金から入ってくるからよしとしているのです。こういったことが、けっこうあるので、保険収入も請求点数✖️10円/点=保険収入計になりません。

歯科医の調査は、自費収入が適切に計上されているかを確認するのが主眼である。自費収入は、例えばメタルボンドであったり、インプラントであったり、矯正歯科であったり、入れ歯であったり、美容歯科だったりしますが、原価が掛かります。原価に見合う自費収入があるかという調査になります。原価に不正がないかを確認する必要もあります。近年は、収入脱漏が難しくなってきたため、交際費や遊興費を必要経費に付け込むことも多くなっている。

一方で、駅前には、歯科医院が複数あり、土日や夜遅くまで診療するなど、歯科医院経営は、かなり厳しいとも言えます。

現場資料の収集から効果を上げた事例

窓口の現金の領収方法から

自費分の窓口取扱は、担当者から丁寧に聞き取る。日計表だったり、予約簿だったり、来患簿だったり、鉛筆書きかボールペンか。院長や院長夫人への現金引継方法を詳しく聞き取る。それと記帳済みの書票に、矛盾がないかを検討する。

事務員の動きに着目して

現況調査に臨場した際に、受付職員の不自然な動きから、当日分の売上日計表が鉛筆書きであることを確認したが、記帳済みの売上日計表は、ボールペンであった。経営者の指示で、毎日書き換えが行われていた。

カレンダーのメモから

事務室のカレンダーにドクターと思われる者と患者名の書き込みがあったが、該当カルテがない。代診分を別保管して除外。

メモ用紙から

患者に説明した際に使用したと思われる自由分の金額が記載されたメモがカルテに止めてあったが、記帳額と違った。

技工委託簿から

現在使用中の技工担当が使っている技工委託簿と進行年分の技工納品書を照合して過不足がないかを検討する。

在庫の現況調査

インプラントの材料の在庫を現況調査で把握する。進行年分の使用分と仕入れ数量を確認して、期末在庫漏れを検討する。

原始記録の検討から効果を上げた事例

診療日誌から

窓口担当者に、毎日の来患者名、保険種別、保険窓口金額、自費金額などを記載した診療日誌を作成させているのが通例である。記載要領を丁寧に聞き取ることが重要です。自費領収証の書き方や高額な現金をいつ引き継ぐかを確認する。

問診票メモから

カルテに貼付されていた問診票メモの裏にメモ書きの金額があり、申告額と相違があった。

料金計算書から

矯正歯科の収入は、①相談料②矯正装置装着料③観察料の順番に発生することになるが、患者別にソートしたら、欠落部分があった。

技工納品書の保管方法に

臨場調査時に確認した技工納品書は、書類差しに刺されていたが、提示された調査年分の技工指示書には、穴の空いていないものがあった。反面調査の結果、技工所と通謀して、書き直ししていた。

技工納品書

技工納品書を念査して、自費分を抽出して、収入計上を照合する。

カルテの検討から効果を上げた事例

保険診療カルテ

自費カルテは、保険カルテと別に作成されていることが、通例であるが、自費カルテのある者の保険カルテを照合したところ、メモがあったり、鉛筆書きがあったり、または、単に金額が記載されていることもある。

反面調査により効果を上げた事例

歯科医と技工所

歯科医と技工所は圧倒的に歯科医が優位にあり、技工所はその指示に従って、全面的に協力(書き換えや改竄)しているのが現状である。したがって、歯科医院経営者が、技工代金を簿外処理(原価に計上しない)すると、技工所はお付き合いをして収入に計上しないこととなる。

反面調査先の納品書控

歯科医院の納品伝票と納品伝票控えの照合により書き換えや改竄の有無を確認する。

領収書

歯科医院が、破棄を予定していた領収書を残していたことを端緒に技工所を反面調査して、裏取引を把握した。

まとめ

古いノートを下に、書いてみましたが、繰り返し書いているようなところもありました。保険収入は、電子カルテと連動して、レセプト請求していので、基本PC管理ですが、自費収入は、別のシステムあるいはアナログ管理が多いのです。

歯科医院経営は、競争時代に入ったといわれてます。そんな中でも患者が集中する歯科医院はあります。管内売上上位の歯科医院調査には、税務署でも、上席調査官や特別調査官部門の調査官が担当になることが多いです。ベテランの職員ですね。そういうベテランの職員に同行する形で経験年数の少ない職員の育成を計っております。

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