業種別事例研究 街の魚屋さん

業種別事例研究

今は少なくなりましたね。商店街の一角に、氷の入った板箱にまだ生き生きとした目が裸電球に照らされキラキラ光るようなお魚が並べられて、上からつり銭の入ったざる籠がぶら下がっている光景。夕方には、晩御飯の魚を求めるお客でいっぱいになります。そんな昭和なお店を調査しました。

業種別事例研究 街のお魚屋さん

昭和の時代の調査です。つり銭の入ったざる籠がぶら下がっているお店です。駅前商店街の中で、ひときわ人が集まる人気の魚屋です。威勢のいい掛け声がバンバン飛び交う元気のいいお魚屋さん。毎日毎日新鮮なお魚が入荷する回転のいいお店。

調査選定理由

駅前商店街の店舗立地良好。連日活況。連年省略。差益率や所得率が低い。従事員一人当たりの売上高が低い。自宅を2世帯住宅に建て替え。

外観調査の結果、仕入れ担当は長男。本人は在宅。信用金庫職員が毎日10時ごろ来店。

申告しているのは、60歳代の男性。従業員は、妻、長男夫婦、次男。雇い人1人。

無予告現況調査

売上、仕入れの両落としを想定。現金商売。部門調査官3人のグループ調査事案として着手。

自宅組3人(上席調査官、女性調査官、事務官)

自宅組が朝8時半に自宅に臨場し、本人に面接し、税務調査に協力するよう説得。

自宅に入り、調査に着手した段階で、現在なら携帯電話で署本部へ連絡するが、当時は、事務官が自宅を出て、本部へ公衆電話で連絡しました。

自宅では

現金監査から、毎日の記帳確認を行います。昨日の現金売上は幾らだったのか。今朝の仕入れには、いくら持って出掛けたのか。売りだめ金の管理は。

そんな緊迫した状態の中で、長男の嫁が、書棚から一冊のバインダーを持って部屋を出ようとしたのを、女性調査官が見逃しませんでした。

「ちょっと待ちなさい」女性調査官が叫び、あとを追います。

長男の嫁は、胸にバインダーを抱えて、自分たちの寝室へ逃げ込みました。女性調査官があとを追い、寝室の前で、説得が続きます。

帳簿残高確認

売りだめ金が、自宅事務所の金庫、カバン、本人夫婦の寝室金庫から出てきます。銀行通帳や定期預金証書がが出てきました。

長男の嫁が持ち出したバインダーに現金出納帳がある。

本人の妻(以下おかみさん)が長男夫婦の寝室の前に来て、嫁にバインダーを持って出て来るように声を掛けました。

二重帳簿

現金出納は、おかみさんが、指示した二つの現金売上で作成された二重帳簿でした。表の税理士へ行く現金出納簿ともう一つの指示された現金売上を書いた現金出納簿。

三重帳簿だった

実際の真の帳簿は、おかみさんが書いていた。おかみさんから、一定の取引先の一定の除外があって、現金が抜かれ、嫁に二つの売上を指示。嫁は税理士用と指示された裏帳を作成していた。

自宅事務所では

後日の証言が翻されることを封じるため、本人と妻、長男、長男嫁から質問形式の応答記録が作成されました。

毎晩、おかみさんが、売上金の入ったざる籠の現金残高を確認し、メモを書いて、嫁にメモと現金を引渡し、現金は、嫁が金庫に保管する。メモにの書かれているのは、現金売上の二つの数字。事務室のゴミ箱には、捨てられた昨晩のメモがありました。

それと仕入れ担当の長男から来た掛け仕入れと現金仕入れの伝票を整理して記帳。翌日のつり銭と市場に仕入れに持って行くカバンに現金を用意。残りを事務室の金庫に保管。

信用金庫反面調査

信用金庫支店に反面調査に入り、家族名義を含めて、取引内容の確認を行います。

仕入れ先反面調査

破棄された伝票の取引先に反面調査を行い、取引額を確認します。

調査結果

おかみさんが嫁に指示したのは、日掛口座資金の除外。

これは、信用金庫に日掛口座があり毎日○万円入金があった。

一方おかみは、特定の得意先への売上と仕出しを除外。別管理していた。こちらは、タンス預金から定期預金になっていた。

これらに対応するため、特定の仕入れ先の現金仕入れの伝票を長男に指示して破棄、差益率が落ちないように工作していたことも判明した。伝票は、ゴミ箱の中から破られた残骸が出てきました。

大規模店舗進出に備えて、資金を用意したい。兄弟に継がせるため、もう一店舗出したい。事業をなんとか継続して展開したいという思いから、顧問税理士に相談せず、自分たちの判断だけで3重帳簿を作ってしまったことが分かった。

調査がなければ

税務調査がなければ、税金は少なくてすむでしょう。しかし、税務調査が来てしまったら、なかなかバレないで済ませるのは脱税している場合、難しいでしょう。貯まったお金も家を買ったりすると資金源を尋ねられるので、使えないと溜め込むばかりの人もいます。また、報道にありましたが、査察に入られて、脱税犯になってしまって、商売をやめた人もいましたね。

専門家を使う

せっかく顧問料を払っている税理士がいるのに、この事例のように、自分たちの考えで脱税するのはあまりも損です。適切な指導を受けていれば、それなりの税額で済んだ話です。

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