質問応答記録書

特別調査

質問応答記録書

Tさんに重加算税を賦課した証拠となったのが、

東京国税局資料調査課実査官が作成した「質問応答記録書」だ。

国税局でも、税務署でも

重加算税を賦課する際には、必ず作成する最重要書類だ。

国税通則法などに規定された書類ではなく、運用上、作成されている書類である。

開示請求しても、出てきたものは、真っ黒塗りでしたと言われている。

今回は、

Tさんを致命的に追い詰めてしまった『質問応答記録書』について取り上げます。

『質問応答記録書』の役割

【重加算税を賦課する証拠】にするためです。

【調査年分(年度)を遡及した証拠】にするためです。

条文の確認

重加算税や調査年度の遡及は、国税通則法に規定があります。

条文を確認し、税務署が何をしたいのかを知りましょう。

(重加算税)
第六十八条 
第六十五条第一項(過少申告加算税)の規定に該当する場合(修正申告書の提出が、その申告に係る国税についての調査があつたことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでない場合を除く。)において、納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し、その隠蔽し、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたときは、当該納税者に対し、政令で定めるところにより、過少申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額(その税額の計算の基礎となるべき事実で隠蔽し、又は仮装されていないものに基づくことが明らかであるものがあるときは、当該隠蔽し、又は仮装されていない事実に基づく税額として政令で定めるところにより計算した金額を控除した税額)に係る過少申告加算税に代え、当該基礎となるべき税額に百分の三十五の割合を乗じて計算した金額に相当する重加算税を課する
2 第六十六条第一項(無申告加算税)の規定に該当する場合(同項ただし書若しくは同条第七項の規定の適用がある場合又は納税申告書の提出が、その申告に係る国税についての調査があつたことにより当該国税について更正又は決定があるべきことを予知してされたものでない場合を除く。)において、納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し、その隠蔽し、又は仮装したところに基づき法定申告期限までに納税申告書を提出せず、又は法定申告期限後に納税申告書を提出していたときは、当該納税者に対し、政令で定めるところにより、無申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額(その税額の計算の基礎となるべき事実で隠蔽し、又は仮装されていないものに基づくことが明らかであるものがあるときは、当該隠蔽し、又は仮装されていない事実に基づく税額として政令で定めるところにより計算した金額を控除した税額)に係る無申告加算税に代え、当該基礎となるべき税額に百分の四十の割合を乗じて計算した金額に相当する重加算税を課する
(国税の更正、決定等の期間制限)
第七十条 
次の各号に掲げる更正決定等は、当該各号に定める期限又は日から五年(第二号に規定する課税標準申告書の提出を要する国税で当該申告書の提出があつたものに係る賦課決定(納付すべき税額を減少させるものを除く。)については、三年)を経過した日以後においては、することができない。
一 更正又は決定 その更正又は決定に係る国税の法定申告期限(還付請求申告書に係る更正については当該申告書を提出した日とし、還付請求申告書の提出がない場合にする決定又はその決定後にする更正については政令で定める日とする。)
4 次の各号に掲げる更正決定等は、第一項又は前項の規定にかかわらず、第一項各号に掲げる更正決定等の区分に応じ、同項各号に定める期限又は日から七年を経過する日まで、することができる。
一 偽りその他不正の行為によりその全部若しくは一部の税額を免れ、又はその全部若しくは一部の税額の還付を受けた国税(当該国税に係る加算税及び過怠税を含む。)についての更正決定等

 

68条は、「仮装隠蔽」があったら、重加算税

70条は、「偽りその他不正な行為」があったら、7年遡及

証拠

「証拠」

これは、二重帳簿であったり、領収証の改竄であったり、相手先と通謀した書き換えであったりします。

これは、「仮装」です。

真実の帳簿や真実の領収証は「隠蔽」されていました。

こういうはっきりしたものは、これらの「ブツ」が証拠そのものです。

しかし、

単に一つの現金売上が計上されていなかった

単に単発の取引先が計上漏れだった

単に自由診療報酬が記帳されていなかった

高級時計の領収証が無造作に消耗品費に計上された

旅費交通費にヨーロッパ旅行代が入っていた

衣服費にスーツもジャージーもゴルフファッションも入っていた

接待飲食代が家族のも友人のも同窓も親戚もぐちゃぐちゃ入っていた

こういったものは、非違の対象ですが、重加対象かと言えば、単に「非違」を見つけただけです。これだけでは、「重加算税」対象にはできない。

「仮装隠蔽」に直ちに当たると言えないからだ。

「仮装隠蔽」の証拠を作る(?)ことになる。

ブツがないから、

国税通則法が定めた『偽りその他不正の行為』『仮装隠蔽』の要件を

調査対象者の口から、

話をさせることにより、「証拠」にする。

見つけるのもプロ(資料調査課実査官)だけど

重加算税賦課のプロ(資料調査課実査官)でもある。

ブツがなくても重加算税をかけるテクニック

重加算税賦課の肝は、

「質問応答記録書」作成のプロになることである。

「質問応答記録書」作成の研修は、税務署レベルでも毎年、行っている。

正しい『質問応答記録』への対応

では、あなたが、税務署や国税局資料調査課実査官から調査を受けて、「質問応答記録書」作成に協力を求められたら、どう対応しますか。

まず、税務署での、「一筆」の経過を

昭和の時代は、調査対象者に便箋に「反省文」みたいな感じで「売上を毎日一万円抜いて記帳しました」「今後はしません」などと書いてもらいました。

これらは、けっして、調査対象者の反省の言葉を記して、処分の嘆願を目指したものではありません。重加算税をかける「証拠」でした。

平成に入って

10年ほど前から、現行の「質問応答記録書」が登場しました。

自分自身、自分に誤りがあったと自覚があるとき

自分の良心に従って、対応してください。

自分は間違っていないと自覚があるとき

戦いましょう。

安易に「妥協」したら、《Tさんと同じ》

世間に知られたら、《犯罪人》扱いされるだけです。

どうやって

税務署が、偽りその他不正や仮装隠蔽の『証拠』を目指しているならば、それを徹頭徹尾否認したあなたの言葉を書いてもらうことです。

マニュアル上

最後の質問で、『なにか付け加えることはありますか?と聞かれることになってます。

そこで、

あなた自身の思いを述べることです。

自分は、『偽りその他不正な行為』は一切していない。

自分は、『仮装隠蔽』は一切していない。

繰り返し述べて、調査官に書かせることです。

国税通則法68条を読み返してください

「あなたが、仮装隠蔽に基づいて、申告書を提出したとき」と書いてあります。

さらに、

万が一、重加算税を賦課されたならば、不服申立をする意志があり、準備もしている。

と記してもらうことです。

ここまで、主張されたら、よほどのブツ(証拠)を押さえていないと、署長は、『重加算税賦課』を決裁しません。

税務署は、(不服申立や訴訟で)戦っても、負ける可能性があると、勝負(重加算税賦課)しません。

なにより、訴訟で負けたくない。

メンツが大事。

プライドが大事。

まとめ

国税局資料調査課は、重加算税のプロ

重加算税「命」の集団

重加算税賦課のプロは、「質問応答記録書」作成のプロ

税務署でも、毎年研修をして、作成の精度を磨いている。

「質問応答記録書」の作成を求められたら、

記載内容に納得がいったら、署名捺印に応じる。

記載内容に納得がいかない・自分の言葉を書いてくれないなら署名捺印を拒否です。