業種別事例研究 建設関連工事業編

業種別事例研究

業種別事例研究 建設関連工事業編

建設業は、大工さんや工務店、内装工事、電気工事、上下水道工事、防水工事、塗装工事など細かく専門業者があります。個人事業から始めて、取引が大きくなって、人も使うようになると法人成します。

税務調査では、個人でも法人でも比較的経験年数の少い若手が担当することが多いです。

業種の特徴は、大部分が特定の取引先があり、請求書や領収書を照合することにより、調査を進められます。非違事例は、売上脱漏または売上と仕入れ除外が多い。調査初動時に現場資料をどれだけおさえるかが調査のキモになる。

建設業調査の一般的な概要

立地条件

材料置き場がある

ある程度の材料なり、資材を置いておく場所が必要になります。

作業場がある

大工工事となれば、それなりの作業場が必要です。

準備調査

ストリートビューなどで確認し、事業所なり住所なりの外観を観察する。場合によっては、外観調査を実施して、業種、事業規模、従事員数を確認する。

決算書の費目別対売上比率分析表を5年間分作成し、各年の異常比率を抽出し、調査する科目の焦点を絞る。

調査年分以外の法定外資料でも、仕入れや掛売上資料は、現在でも取引がある可能性があるから収集先をメモする。

法定外資料とは、税務調査に入った際に、取引先との取引金額や決済状況を収集し資料せんにしたもの。

事前通知

臨場調査は、店舗に臨場して行えるように予約を入れることが重要である。

例えば、「臨場時間を9時からぐらいにしてお昼までにおおかたの初動調査を終える。昼どきは中断し、午後2時過ぎから再開して午後4時までに終える。」ような形で了解を取り付ける。

実地調査

初動調査

カレンダーや手帳など仕事のスケジュール管理を確認、基本簿書の保管、主要材料の在庫数量、更衣室やロッカー、従業員氏名と役割を確認する。ゴミ箱確認必須。

現金監査と現金管理状況聴取

売上は、振り込みがほとんどであるが、支払いは、現金決済が多い。仕事と家庭と財布の区分けがされているか、店主のカバンを含めて全ての現金を確認する。

住宅地の店舗兼住宅の事業者の実地調査事例

選定理由

法定外資料せんあり

所得率低調

不動産購入

住宅借入金等特別控除を受けている

事前通知

事前通知を調査経験1年目の新人女子職員が行う。

青色申告者で税理士関与あり。実地調査に立会あり。

調査対象者は、40代の男性。妻は青色申告専従者。中学生と小学生の子供がいる。

戸建て住宅を購入し、転居して10年経過。

臨場調査

自宅に臨場し、リビングにて調査。

本人、妻、税理士立会。

概況聴取。

収入先は一ヶ所。

驚いたことに請求書も領収書も直近まで全て破棄。

税理士も唖然として言葉なし。

決算はどうしたのかと聞くと、なんと取引先に年間取引額をプリントしてもらったと提示。

銀行通帳を税理士は確認しておらず、銀行入金額と件の年間取引額の月別金額は不突合。

取引先発行のプリントが決済額か取引額かも回答できず。

当然ながら、法定外資料せんとも不突合。

請求書や領収書を直近まで破棄するなど申告内容の確認ができないため、反面調査に移行。

取引先反面調査

取引先法人の管轄税務署が、前年実地調査に入って、下請けの取引について法定外資料せんを作成していることから、法人課税部門の調査簿書を確認。
調査対象者が提示した取引先発行という書類の虚偽が濃厚となったため、取引先へは7年間の取引を確認することを通知、協力を求めた。
取引先社長と顧問税理士立会で実地反面調査。調査先が発行した請求書、領収書の写の提出を受ける。

申告時に調査先から何か頼まれて書類を作成したことはないと証言。

近隣銀行調査

近隣都市銀行、信用金庫、郵便局へ預金取引の有無を確認。簿外銀行口座を把握。

来署依頼

調査対象年分や重加算税を見込んだ調査に移行することから、調査対象者と税理士に来署を求めた。

得意先が作成した取引明細書がでたらめであること

簿外の銀行口座があり、複数の取引先があること

外注加工費の領収証の筆跡や記入数字に改竄があること

これらの事実を突きつけて、調査年分が7年になることと重加算税を掛ける調査に移行したことを説明した。

税理士は、自らを裏切られたことに終始苦汁の表情。

調査対象者は全部捨ててしまったからと事態の重大さを理解してない様子。

全ての取引先へ反面調査に入り、7年分の取引を確認すると説明しても何も保存がないからと諦め顔。

外注先の領収証の数字改竄も自分が外注先に言った金額を書いてこないからと主張。

「質問応答記録」作成していたら

来署を求めて確認したことを整理し質問応答記録を作成しながら、再度、請求書や領収書の控を破棄した理由を質していきます。

銀行入金額とも合わない物をどうやって作成したのかと問ても合理的な答えはありません。

さらに本人はPCやワープロも持っていないのに件の書類はなんらかのソフトを使って作成プリントした物です。

誰が作成したか?

友達に作って貰った。

誰かは迷惑がかかるから言えない。全部自分が悪い。

どうもおかしい。

普通、捨てたと言ってもそれは、強制調査ではありませんから家中家宅捜索されるわけではありませんので、口だけのことが多いのです。

そこで、

「実は、捨ててないよね。普通は、捨てたと言ってもほんとは捨ててないのが商売人だ。」

こういうと

なんと、持っていると白状。

再度臨場調査

質問応答記録の作成を中断。

再度の自宅臨場調査。

一階の衣装部屋のタンス引き出しの奥から破った請求書・領収書控が出てきました。

調査結果

郵便局と地元の銀行に簿外口座あり。

銀行調査で把握した取引先に反面調査を実施して取引額を把握。

所得税と消費税について、調査年分は7年。重加算税7年賦課。

店主のことば

自分でも嫌になるくらいいい加減な性格でした。馬鹿なんです。家の前の道路が拡張されるのが予想より早くなって、引越しを考えていました。子供の進学資金も貯めたかった。

申告時期が近づき、税理士さんに書類を持っていく時になって、適当に種類を用意してやって貰った。うちみたいに小さいところに先生も関心ないみたいで安く申告書を作ってくれた。

それでいいと思っていた。調査の連絡がきて不安になっていろんな物を破って隠しました。

あまりの追徴金額に驚いた。お金を借りないと払えません。

まとめ

自己判断での売上脱漏がバレた時の税負担は、よほど溜め込んだお金があれば払えますが、7年分の重加算税賦課の税金は大変な負担になります。税負担に対しては、適切な専門家の助言を求めていただくのが一番です。

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