業種別事例研究 街の魚屋編  続

業種別事例研究

脱漏対応別分析

仮定の数字ですが、表にした方が理解が進むと思います。

用語の復習

差益=売上ー売上原価 会計用語は売上総利益ともいう

算出所得=差益ー標準経費

特前所得=算出所得ー標準外経費

特後所得=特前所得ー青色特典経費など

この表は、年分がxx1年からの3年間の損益計算書から作成します。調査前と調査後の数字を対比できる形式になってます。調査が終わって最終的に決裁を受けるときもこのような表を作成します。

売上のみ脱漏

単純に売上から毎期1000万売上除外をした場合

xx1年 xx2年 xx3年 増差計
調査前 調査後 増差 調査前 調査後 増差 調査前 調査後 増差
売上 19,000 20,000 1,000 21,000 22,000 1,000 22,000 23,000 1,000 3,000
差益 4,900 5,900 1,000 5,490 6,490 1,000 5,785 6,785 1,000 3,000
算出所得 3,600 4,600 1,000 4,190 5,190 1,000 4,285 5,285 1,000 3,000
特前所得 2,400 3,400 1,000 2,990 3,990 1,000 2,200 3,200 1,000 3,000
特後所得 400 1,400 1,000 500 1,500 1,000 600 1,600 1,000 3,000
差益率 25.79% 29.50% 3.71% 26.14% 29.50% 3.36% 26.30% 29.50% 3.20%
算出所得率 18.95% 23.00% 4.05% 19.95% 23.59% 3.64% 19.48% 22.98% 3.50%
特前所得率 12.63% 17.00% 4.37% 14.24% 18.14% 3.90% 10.00% 13.91% 3.91%
特後所得率 2.11% 7.00% 4.89% 2.38% 6.82% 4.44% 2.73% 6.96% 4.23%

 

売上だけを単純に脱漏した場合

申告差益率が落ちるのが特徴

01年25.79%  02年26.14%   03年26.30%

01年度に1000万落として、翌年1000万、翌々年1000万、3年間で3000万売上を脱漏してしまった。

単純であるが、手間が掛からない。税金が高いからと自分で決算をやっている場合税金を少なくする、一番多い手口。

売上と売上原価を両落とし

こちらは、売上だけを落とすと差益率が落ちてバレやすいため、仕入原価も落として決算書の体裁を良くしようという事例

利益の段階で1000万円を得るためには、売上3000万落とし、原価も2000万落として数字を合わせるので、手間を掛けて帳簿を作ることになる。

xx1年 xx2年 xx3年 増差計
調査前 調査後 増差 調査前 調査後 増差 調査前 調査後 増差
売上 17,000 20,000 3,000 19,000 22,000 3,000 20,000 23,000 3,000 9,000
差益 4,900 5,900 1,000 5,490 6,490 1,000 5,785 6,785 1,000 3,000
算出所得 3,600 4,600 1,000 4,190 5,190 1,000 4,285 5,285 1,000 3,000
特前所得 2,400 3,400 1,000 2,990 3,990 1,000 2,200 3,200 1,000 3,000
特後所得 400 1,400 1,000 500 1,500 1,000 600 1,600 1,000 3,000
差益率 28.82% 29.50% 0.68% 28.89% 29.50% 0.61% 28.93% 29.50% 0.57%
算出所得率 21.18% 23.00% 1.82% 22.05% 23.59% 1.54% 21.43% 22.98% 1.55%
特前所得率 14.12% 17.00% 2.88% 15.74% 18.14% 2.40% 11.00% 13.91% 2.91%
特後所得率 2.35% 7.00% 4.65% 2.63% 6.82% 4.19% 3.00% 6.96% 3.96%

売上と売上原価の両落としをすると

売上だけを脱漏すると申告差益率が落ちてバレやすくなるため、原価も落として見てくれの差益率をよくして、調査選定を免れようという手口

01年28.82%  02年28.89%   03年28.93%

手間をかけるだけあって、売上の領収証を発行しないや、脱漏用の領収書綴りを用意する。それに見合った取引先をまるごと落とす。簿外で払う様々な工作をする。

従事員一人当たり売上が落ちる

KSK分析は

見てくれの差益率が良すぎる。

従事員一人当たり売上が低いと判定する。

単純に売上を落とすより多く売上を落とすためである。

売上金額の規模からみて、所得金額が低い。

脱漏所得のたまり

現金預金・投資資金・地金

今は、他人名義の預金が作れないが、昭和の時代は、無記名定期預金が多かった。銀行の次長クラスが無記名の手控えを持っていた。

株式投資資金・地金・金融商品

別荘・高級車・愛人・海外資産

いろいろですね。溜まったものは使いたい。

あまりに脱漏が多いとどうなる

査察事案になる

これは、非常に恐ろしい事態になります。脱税犯になります。社会的にも制裁を受けることにもなり、信用を失います。事業継続が危うくなります。

調査年分が7年

通常3年分調査しますと事前通知を受けて調査を受けます。しかし、悪質な脱漏であると判断されると、調査年分が国税通則法の時効規定最長7年になります。

申告納税額との差額を本税と言いますが、

本税❎35%の重加算税が掛かります。

1.35❎7 年分=9.45

仮に1000万円の本税だったら

1000万/年の7年分が7000万ですが、9450万に。

延滞税は除算期間がないので、7年前の税金には7年分の延滞税が掛かります。

3%弱ですが、7年分なら21%、6年分18%、5年分15%、…

ざっくり本税の8割くらいに。

消費税も同じように追徴になり、加算税・延滞税も掛かるので

大きなダメージになります。

調査官
調査官

延滞税の除算期間とは、重加算税が掛からない修正申告書の場合は、1年間と修正申告書提出から納付までの期間に延滞税が掛かります。

まとめ

脱漏対応別事例を書いてみました。

ここの数字は仮定の数字であり、実例ではありません。

売上脱漏は、仮装隠蔽と認定されると重加算税対象になります。仮装隠蔽があると調査年分は最大7年間になります。当然ながら、調査額が出るまで、多くの時間が掛かります。その間精神的にも大変な負担になります。

売上脱漏は、絶対に得になることはありません。

もし、思い当たることがある方は、「自主的に修正申告書の提出する」をお勧めします。

確定申告書に誤りがあったとき
修正申告と更正請求について説明